おんな城主・直虎の禅語 ⑥ 「君看双眼色、不語似無愁」

君看双眼色、不語似無愁
~君看よ双眼の色、語らざれば愁い無きに似たり~
おんな城主 直虎での緊急特番でだされた『鶴のうた』にも掲載されていた、私も大好きな禅語です。
訳してみるならば、「言葉にしなければ、私は悲しんでないように見えるでしょう。でも、私の目をよくご覧下さい」ということになりますでしょうか。
しかし、この語の深いところは、これだけでは終わりません。
「私の目をみて、言葉では言い表せない、想いを感じ取ってください」と続いているように思えるのです。
k0170
この禅語は、『槐安国語(かいあんこくご)』に見られる言葉です。『槐安国語』とは、京都の大徳寺を開かれた大燈国師の語録『大燈語録』に、白隠禅師が全的なコメントを添えたものです。
大燈国師の「千峰雨霽れて露光冷たし」、つまり「千山に降りそそいだ雨もあがって、玉露の光が一面にひろがって清らかである」という言葉に対しての白隠禅師のコメントとしてつけられています。
その二句先に白隠禅師がつけられた言葉には、「若し琴中の趣を識らば、何ぞ絃上の声を労せん」とあり、琴のまことの趣さえ理解すれば、必ずしも絃の音色は必要ないというのです。
ご縁をいただいて、大河ドラマの「おんな城主 直虎」の禅宗指導をさせていただく中で、ある俳優さんと、お話する機会がありました。
禅の話や、白隠禅師の話をしている中で、彼が大切にしているとおっしゃられた禅語がこの言葉でした。
「この言葉のような俳優になりたい」といった、その両目は本当にキラキラ輝いていました。
自分の眼だけで伝える芝居がしたい ――
もちろん、台本にあるセリフや立派なセットが不要だと、彼が言っているわけではありません。
セリフやセットや共演者に対して、誰よりも向き合い、敬意を払う中で、そこにとどまらない。
さらに、それら全てを超越して、自分の眼だけで、視てくださる方々に想いを伝えていきたい。
本当にすごい俳優さん、すごい人だと思いました。
また、この禅の言葉は、芥川龍之介の『羅生門』の見開きページにも載せられています。
君看双眼色
そして、何と次のページには、「夏目漱石先生の霊前に献ず」と記されているのです。
文字だけ、活字だけでは伝わらない何かを、この本で伝えたい!そんな芥川龍之介の切なる願いが込められているように思えます。
素晴らしい脚本、それを演じられる俳優さんたち、衣装やセット、指導の先生方、素敵な音楽、それを支えるスタッフさんたち、最終的にドラマに仕上げていかれる演出さんたち。
たくさんの人たちのすべての想いが、一つの流れになって、人に伝えることができる。
そして、視る人たちの心に感動を起こすということを、教えていただきました。
ファイル 2017-09-13 14 12 01
菅野よう子さんによる小野政次へのレクイエム、『鶴のうた』には、高橋一生さんによる禅語の朗読も収録されています。
本当にかっこいいです!
さらに、柴咲コウさんの観音経『謡い経』までも入っています!!
みなさんも、自分の人生の杖になるような「杖言葉」を、禅語から探していただければ幸甚です。