松無古今色、竹有上下節、梅自発清香(五灯会元)
新年ともなれば、床の間の軸物も何か目出度いものに掛け替えます。目出度いものといえば松竹梅という事になります。松竹はいつも青々として長寿の標として尊び、梅は百花に魁けて咲き、いち早く春を告げる花として、新年の風物です。今回はその松竹梅に因んだ語を選んでみました。
松は「松樹千年の翠」といわれるように、そのみどりを古今に変わりなく一様に保ち続けます。竹は上下の節があり何時でもはっきり区別があります。普通「松無古今色、竹有上下節」の二句だけで「松」と「竹」それぞれ平等と差別の特質をそのままの情景として詠じた語として独立して有名です。
そこに梅が入って松竹梅の揃い踏みとなるわけです。梅は冬が終わり春になると、誰が命ずるわけでもないのに、黙って自ずと開き、その清々しい香は三千世界(宇宙全体)に拡がります。
一級禅師は、「門松は冥土の旅の一里塚、目出度くもあり、目出度くも無し」
と正月に浮かれる人々を尻目に青竹にドクロをぶら下げて京の町々を歩いたといわれます。無常の世の中、明日、否今日にも「死」が来るのか分からないのに正月だからといってそうそう浮かれてばかりはいけないかも知れません。しかし、一陽来福の新年、松竹梅の掛物のある座敷で親子夫婦兄弟がお互いに威儀を正して旧年の労を感謝すると同時に新しい船出にあたり、気分を新たにして進路を間違えないように仲良く語り合うのもまた、大切ではないでしょうか。